ウルフカブス ハンドブック

第9食

ナイヤガラの氷事件 スカウトだったらどうしたろう
なわむすびの用途
水泳
英国の海員
ゲームすること
ジャック・コーンウエル ヴィクトリア十字章
ウルフ・カブのねぐら
ねぐらの作り方


●ナイヤガラの氷事件

 何年か前,私がカナダにいた時、恐るべき出来事がナイヤガラの滝で起こりました。真冬のことでした。1人の男とその奥さんと17才になる少年の3人が橋を渡っていました。その橋は,流れの早い川に架かっている,氷が張ってできた橋でした。突然メリメリと音がして,氷の橋は一部分壊れたのです。男の人とその奥さんとは,元の氷から割れて流れ去りつつある,浮いている氷の一切れの上に乗り移ったのですが,少年はそれとは別の氷の上に乗りました。

 周り一面を見ると,水は他の浮いていた氷の上を流れ,氷と氷とは互いに擦り合いぶつかり合って,とても泳ぐことなんかできません。また,乗り移れるようなポートもそこらに一つもなかったのです,もうただ流れのままに任すほかはない。その流れは.ここらではゆっくり流れ淀んでいますが,だんだんおかまいなく彼らを下流1マイル彼方の恐ろしい急流に,運んで行くのでありました。

 この危険な有り様を川岸で見ていた人々、または見に来る者がたくさん集まってくるけれども,1人として助けようとして何らかの手をうつ人はないようでした。この川筋は二つの橋の下を通る。それは急流にかかるすぐ手前のところに架けられているのです。

 1時間ほどこの気の毒な人々は浮いた氷とともに,流されてこの地点までやってきました。橋の上では,人々がロープを構え(橋は,水面まで160フィートの高さにあった)それを垂らして,流されている人たちの,道筋にぶらさげました。

 そこまで来ると,少年の方はロープを捕まえる構えをし,喜んで自分の体を上の方に引き上げる手さばきをしました。しかしながら,ある高さまで上って行ったとき,この気の毒な少年は,もうここれ以上上る力がなくなって,氷の流れの中に落ちてしまい,とうとう見えなくなってしまったのです。

 別の氷の上にいた男の方は,ロープを掴み気を失っていた奥さんの体をくくったのです。そこで,とにかく彼女は助かるようでした。ところが,流れは彼らを押し流した。この男の両手はかじかんでいたため,ロープの結び方を失敗していたので,ロープは,この人の手からすべり,2秒の後には彼と奥さんの2人とも,ものすごく渦巻く急流の底に吸い込まれて苦しみを終わったのでありました。
氷事件の現場を示したスケッチ地図

 カナダのスカウターの人は,ちょうどこの事件のすぐ後に汽車に乗ってこの地に着いた。そして,乗客の人たちがこの事件をしゃべっているのを聞いたと私に語りました。乗客たちはこの人が,スカウト関係の人であることを知らないので,ある1人は,こう言ったそうです。

 「ねぇ、もし1人でもボーイスカウトがその場にいたなら,何とか良い考えを出して,気の毒なこの人たちを助けただろうなぁ。」と。

 これによっても,世の人々がスカウト達ち望みをかけていることがわかりますね。この期待に沿うただ一つの道は「そなえよつねに」であります。

 事件の後で利口になるのは.誰にもできます。けれども再びこんなことが起こったら,一体どんなことができるだろうかということを考えておくことは,たいへん役立つことであるし,また興味深いことでもあります。しかも,君たちがその場にいて,それを見てたらどんなことをするかを考えてここに,この事件の現場を示したスケッチ地図をのせておさました。

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●縄結びの使い方

 この事件に関連して,注意されるべきことが一つあります。それはスカウトたちがみんなしているように,縄結びができるならたいへん役に立つのにということであります。世の人々は,「そんなつまらんことを稽古して,いったい何の役に立たせるんだい?」とよく言います。ご覧なさい。縄結びを知っていたら3人の命が助けられたのに,というよい例がここにあったではありませんか。
片腕結び(オーバーハンド)
も、大きなループになる海
員の結び方です。結びやす
くて解けにくい。

 ロープを,橋の上から下ろす時,相手の体に巻きつけるため,あるいはその足や腕を通すため,一つか二つかのループ(輪)を作って下ろしてやるべきでありました。ところがそのロープにはそういうループが作ってなかった。しかも3人とも,もやい結びや片手結びの結び方を知らなかったので,自分の体が救えなかったのです。

 カブは誰でもみな縄結びが正しくできねばなりません。

 普通の子供は,何と不器用ではありませんか! ひもやロープをもつらせますね。そうなると解けこともできないし、絞めようとすれば抜けてしまったり,ひとりでに解けたりします。せっかくくくりつけたいと思っているのに! こんなざまでは,船員や橋作りの用にはたちません。

 縄結びは難かしいものではありません。自分でできるようになると、もうすぐに人に教えることができます。

 第1星章では,一番大切な結び方を,二つ学ばねばなりません。ロープかコードで稽古します(糸でなく)。そして,自分で上手になったと思ったら,さっそく暗い場所か,または目隠しをして,結んでみるのです。その結果,まだぼくは,自分が考えたはど上手じゃないなぁ,と気づくでありましょう。

 けれども縄結びは,いつも昼間に必要があるのだから,昼間にさえ結べればよいのだと考えてはなりません。君のテントは真夜中に風に倒されるかも知れないし,いつ何時、馬は綱を噛みきって逃げるかも知れないし,帆は,リーフティング(縮める)の必要があるかもしれない。そういう訳で真っ暗の中で縄結びをしなければならない場合が,しばしばあります。ですから前もって結び方を学んでおいてよかったと君は思うでしょう。

(左)本結びは、荷物や包帯をくくるときに用いる。
(右)ひとえつぎは、2本のロープを繋いだり、輪にロープを取り付けるときに用いる。

 いままで結んだことのない君たちに,結び方を書物で教えることは難かしい。ですからアケイラか,または君の組の組長に結び方を教えてもらいなさい。

(訳者付記。カナダ本には,この次に本結びの説明,ひとえつぎの説明,巻き結びの説明,もやい結びの説明が載っている。これは,カナダは,4種類の結索を課しているからである。参考のため訳文を付けておく。・・・・・

「カナダ本より・・・・

◆リーフノット(本むすび)
 リーフノット(本むすび)は,2本のロープをしっかり繋ぎ合わすのに使います。小包をくくったりします。結び目が平らなので,救急法に多く用いられます。包帯はみなこれでくくるのです。簡単な結び方でしかも抜けないし,また解きやすい。

◆シート・べンド(ひとえつぎ)
 シート・べンド(ひとえつぎ)は,太さの違う2本のロープを,繋ぎ合わすのに用います。太い方のロープで輪を作り,細い方のロープの端を,この輪にと通して輪の後ろを一回りさせ,前に輪をくぐらしたロープの下に曲げて,図にあるようにはすかいに抜く。その端は反対側に出ます。

◆クラブヒッチ(まきむすび)
 これは,大へん必要な結び方です。易しい結び方でもあります。これは主にポールにロープをしばりつけるのに用います。図をごらんなさい。ロープの両端は緩むことなしに張り切ります。縦にも上下にもずり落ちない。この結び方には、二つの方法ありますから,二つとも,学びなさい。目隠しで結んだり,体の後ろで結んだりしてうまくできるまでは,安心してはなりません。

◆ボウライン(もやい結び)
 ボウライン(もやい結び)これは知っておくとたいへん良いものです。作ったループ(輪)が一定しているからです。水中でもがいている人にロープの一端にこれを結んで投げてやる。そういうむすび方なのです。もう一度言いますが,アケイラまたは,シクサーに願いして結んで見せてもらうとよろしい。ですが,ただ見るだけでなく,もちろんその指図に従って,君も結んでみる。まずロープの途中に,小さいループをこしらえます。次にロープの一端を手にもったままでこのループをくぐらします。くぐらしたら,更にスタンデイング(元綱)の下をくぐらして,前作ったループの中に,上から下に(もう一度)通すのであります。

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●水泳

 水泳は,第1星章の課目ではありませんが,真に必要なものです。これは,小さい時から学ぶほど良いものです。あとでカブ水泳章に,及第したいことでしょうから。君らがボーイスカウトの1級スカウトになろうと思うなら,水泳は必修課目となりますので,できるだけ早くから練習を始める方がよいのであります。

(訳者記,カナダ本はこの次に,ホブラーのことを載せている。英国本の旧版にあるが新版にはない。けれども,参考のため採録しておく。)

〔カナダ本より−
           ホブラー(Hoveller)
       (免許状のない水先案内人)

「ホブラー」とは何か知っていますか?

 知らない? よろしい。これはね,イギリスの沿岸、特にイギリス海峡に近づいて来る船の水先案内(パイロット)をして暮らしをたてている人のことであります。

 正式のパイロットは,もっともっと高いレベルの訓練を受け,そして難かしい試験にパスしないとパイロットの資格はとれないのです。海岸目指し近よってくる大きな船は,どの船もみな1人のパイロットを載せて,岩とか砂州の間を船が通るよう,水先の案内をさせることになっています。

 けれどもホブラーは,その海岸における危険な場所のすべてについて教わり,どんな天候の日でも,とりわけ霧や大風の吹く悪天候の時出かけて行き、本式のパイロットが助けようと思う船を見つけることができない場合,小さい帆船に乗って,出動する人であります。

 ホブラーは,こうしてやってくると,ごく僅かな賃金で正式のパイロットではできない仕事を,船に対していたします。そして船を,港へ導いて行きます。

 彼はまた,いつでも砂州や岩から船を安全に救うための用意をしています。かれは,ちょうど大平原で殺されている動物に襲いかかるハゲタカのように,いつもあちらこららを睨んで,さっと現れます。

 ホブラーは,船の積み荷をすくいあげて,一儲けをしようと構えています・・・・もしも難破している人間の命を救わなかったら,あるいは「レッカー」(難破船荒しの海賊)と呼ばれるかもしれない。ホブラーによって助けられた美談が,実にたくさんあります。

 ですから,ホブラーは勇気に富んだ粘り強い海員でなければなりません。猛烈な荒しの中でも,それは常に寒い湿っぽい日なのですが,小さいポートに乗って海を守ります。まともな食物も寝床もなしに。たとえ霧の深い時でも,1インチ先をよく知っています。誰も自分を守ってくれる人はない。それでも彼は自分の暮らしのために励み,自分の命の危険を冒してでも,難破している人を助けるのであります。彼こそは海の本物ののスカウトです。

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●イギリスの海員

 海のスカウトの,もう一つの素晴らしいタイプは,遠洋漁業家です。彼は,陸地から遙かに遠い漁場に,船に乗って出かけ,魚をとることを,生業としています。それは,苦しい寒々とした生活であります。航悔には十分耐える船ではありますが,船は小さいので常に危険に晒されています。

 けれどもよく考えてみると,わが国の海員をこれほどまでに逞しく強く鍛えてくれたものはこの困難なので,それによってこのような頑丈な信穎できる人間ができたのであります。

 これら,ホブラーや遠洋漁業家の仕事は,平時においては人々の注意をひきませんでしたが,大戦中にはわが艦隊のために素晴らしいはたらきを見せてくれました。わが国の周りの海面いっぱいにまかれた敵の水雷の大掃除をしてくれたからです。水雷は水面に浮いている鉄の爆弾で,わが国の船を沈めるため敵がばらまいたものです。

 けれども,掃海隊は危険をものともせず,この危ない作業を巧実にいたしました。それは水雷を拾いあげて船を助ける作業なのです。

 次には般員です。この人々は商船に乗って世界のすみずみまで大洋を渡ります。私たちは町中では見かけませんが,新聞ではしばしば彼らのことを聞きます。

 海上では,難破や船火事があり,衝突や浸水もおこります。けれども,そういう災難のほとんどの場合,海員たちがよく命令に服在し危険に際して,自分たちそれぞれの役目をはたらいた立派な話を新聞で私たちは知ることが多いのです。

 我がイギリス海軍のブリュージャケット,私たちは路上で時々見ますね。彼らは人好きのする,強い朗らかな若者です。言いつけられたことなら,何でも手をつけることができる男です。

 彼らの勇気と紀律とは有名です。しかしその勇気とは,海戦の最中に大きな鋼鉄戦艦の底で,はたらくために,下の方におりてゆく人間の勇気というものと,二重になっている勇気なのです。そういうことを考えたことは,ありませんか?

 ある者は鉄の甲板の下にある弾薬庫に下りてゆく役目,またある者はタービン機関を見守る役目,或いは罠の中のネズミのように閉じこもってカマを焚く役目をします。一方その頃,艦上の方では彼ら兄弟分の青ジャケットたちが,張り切って大砲をぶっ放したり,艦のまわりの様子を見張りしています。

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●「ゲームをする」ということは

 私は,ある提督に連れられて,軍艦に乗った日のことを思い出します。私たちは,艦の底にある一室に這うようにして下りて行きました。そこは防水扉によって水兵たちは閉じ込められ,もし艦が沈むようなことが起きても,逃げ出すことはできません。
提督はこう言いました。
「ここの水兵たちは勇敢ですよ。目立たない,ひとつも面白くない,花々しくない役目をはたらいている人たちなのです。けれどもこういう人がもしいなかったら,艦は動かないし,戦争にも勝つことは出来ないでしょう。」
と。

 私はわが国の人々は皆,この人たちの様になってほしいと思います。自分のデューティを励むのです。自分の持ち場は人の目につかない、人が気にもかけない持ち場です。そういう持ち場を助けて働く。それは自分のデューティだからであります。彼は面白い派手なものを望まないからこそやれるわけです。

 私は,学校でフットボールをし,永らくゴールキーパーをしたものでした。

 これは,海軍の機関兵やカマ焚きによく似ていると思います。その訳は,私は休みなくボールを掴むというプレイをしなければならない。他の者は見物人の喝采の声の中にボールを掴んで突進するが,私はただ1人ゴールに立っていなければなりません。寒いし人目を引かないけれども。

 その上,敵がやってきて攻撃をかけ,わが軍のバックをぬける。そうなると勝つも負けるもそれは人目につかないがその任務をはたす男・・・・すなわら,ゴールキーパーの,はたらきにかかるのであります。

 カブ諸君。このことを忘れないでください。楽しくなくとも,ほかの人たちの心を引かなくても,君の役目に励みなさい。さらにその役目をやり遂げねばなりません。なぜでしょう。君は「ゲーム」をしているからです。自分の名誉とか自分の興奮のためにしているのではなくて,味方の勝利のために頑張るのであります。

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●ビクトリア十字章をもらったジャック・コーンウェルの話

 第1次大戦中、君たちのスカウト兄弟の多くの人々が,大艦隊の船や,巡洋艦や駆遂艦に乗って,軍務に就きました。これらの船の海将や士官から,私はスカウトたちの素晴らしい務めぶりや,立派な精神について書いた手紙をたくさんもらいました。

 ある士官は私に、自分たちは海軍練習船からきた少年よりも,スカウトだった少年の方が好きだったと言っていました。それは,人がついて見ていなくても,自分たちの仕事をよくやるに違いないと信用されうるからだそうです。怠けてていやしないかと,監督する必要はないのです。スカウトはその仕事が自分を捧げるに足りるような値打ちがあるかどうかなんてことを考えないで必ず行うものと、人から信じられ得るものなのです。

 自分の命を捧げたた例がひとつあります。それはジャック・コーンウェルのことです。
 彼は、砲員の1人として軍艦「チェスター」に乗り組んでいました。1916年6月のジュトランド沖大海戦の時でした。(訳者記、これはドイツ艦隊との海戦)。受け持ちの大砲の砲員はほとんど戦死して2人だけ残った。たいていの人なら1人で大砲は撃てないから逃げたり隠れたりするでしょう。だが彼は怪我をしたままその場に立っていました。いつ何時彼に命令が来ても良いように備えていたのです。重い傷に顔色も青白くなったが、その周りに倒れて死んでいる戦友を見ながら,その場を離れなかった。

 彼は,後で傷のためとうとう死にました。しかし立派デューティを果たしました。たとえその身は死んだにしても、スカウトは「やりとげるという信用」を表したのです。

 彼は優れた勇気のご褒美としてビクトリア十字章を授かりました。私たちはこのジャック・コーンウェルの名前をとって,コーンウェル章を作りました。それは「デユーティに自分の命を捧げて、併せて、勇気・忍耐または豪胆である」人に授ける勲章として作られたのです。

 いくら少年が小さいからといって,ウルフ・カブでもヒーロー(英雄)になれますよ。ここに,とにかく二つの実例があります。二つとも新聞に出ました。

 わがウルフ・カブ隊もだんだん強くなり,どの階級の者でも英国のカブは,王立人命救助協会から人命救助の免状をもらいました。この表彰はスカウトならたくさんもらっています。

 グラスゴー第9団のウルフ・カブたちは,その隊員の1人の行いいによってこれを受けたのです。その1人というのは,ウォルター・ピットキースリイという少年で,その弟を救うため自分の命を捨てたのです。

 4月29日,ビットキースリイは10才でしたが,弟が水のいっぱいある泉のそばで遊んでいて水の中に落ちたとき,ためらうことなく助けに飛び込みました。そして弟を岸に運ぶことはできたのですが,自分は力尽きて水の中に落ちて溺れ死んだのです。

 (訳者記,実例が二つあるといいながら,この一つしか出ていない。カナダ本には,カナダの実例が二つ挙げてある。それを次に,訳しておく。)

 カナダのカブで,一番初めにこのコーンウェル章をもらったのは,アルバータ州マックシオッドのラルフ・モーゼス君でした。かれは両脚のひどい不具のため,永年入院していました。何回も骨に植皮する手術をされました。病院の院長さんは言いました。

「この子は,手術の終わるまで,いっも立派な小さい兵士でした。決して痛がらずおとなしくしていた小さいジェントルマン(紳士)でした。にこにこしてその人柄を表していた‥‥‥ほかの子供のよいお手本ですよ。」
と。

 もう1人のカナダ人カブのヒーローは,ウエーン・プレスコットという名の10才になるオンタリオのペングロークの少年です。自分の安全を顧みず彼の従兄弟のベティがインデイアン河の深みに落ちたのを救いに行きました。不幸にもウェーン少年はその従兄弟と一緒に溺れて死んだので,その勇敢ななはたらきは役に立たなかった。しかし彼の勇気はブロンズ・クロス(青銅十字章)をもらって褒め称えられました。

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●ウルフ・カブの,ねぐら

 私は一度、オオカミのデンの中に入り込んで、一体どんなところにオオカミは棲んでいるのか探ったことがあります。そのデンは,乾いた土手の脇で上から岩がかぶさっているその下にある,低い洞穴でした。穴はその半分は自然の穴で,残り半分はオオカミが掘ったものでした。

 その内側に入れば、オオカミは安全に身を隠すことができ,悪天候にも濡れず,誰にも見つからない。どんな大きな動物から攻撃されても危なくないように,入口はとても狭いから腹這って入るほかありせん。

 それは,ジャングル・プックに出ているオオカミの洞穴と,だいぶ違っていました。あれはオオカミに助けられたマウグリイをとってやろうとシェアーカンがやってきた。そのマウグリイをオオカミがまた助けたところでしたね。

 オオカミどもとマウグリイは,無事穴の中にいましたが,入口が狭くてシェアーカンは入ることができない。外の方で,ただ吠えて怒るだけでした。

 私が実際見たオオカミの洞穴は,ねぐらの後ろの壁に石が一つはめこんであり,その右の裏側に第2の小さい室があって,この穴は明らかに若いオオカミたちが掘ったものでした。若者たちが自分たちの住処にしようと思って掘ったものです。

 それはそれとして,君たちカブにとって,これはよいお手本になります。君らは,森の中や原っぱへ出かけて行ったとき,よく乾いた住みごこちのよいホームを自分たちの手で作ることができなければなりません。出来合いの住処を買うよりも,自分たちの手で作る方が,どんなに面白いか言うまでもありません。
 あなたのお庭の中にひとつ作ってみるとして,やりはじめることができますね。

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●ねぐらの作り方

 手持ちの建築材料で,シェルター(雨やどり,日よけ)のようなものを作るのです。 ごく簡単なものは古い袋で作られます。袋の布を縫い合わせ十分な大きさにします。そしてその一辺を垣根とか塀にしっかりくくりつける。次に他の二隅をポールか棒をつっかえ棒として張り広げます。こうすれば日ざしのきつい時でも,そこへ行っていろいろのゲームができる。すばらしいデンを持ったことになるのです。オオカミの絵とかジャングルの動物などを,その袋の布に描いて,装飾にすることもできますね。けれども夜にそこで寝るためにこれを使うのは,やめた方がいいでしょう。雨を防ぐことはできないからです。だが君たちが大きくなってスカウトになれば,その下で寝ることもたびたびあるし,これがとても愉快でもあります。

 私は,ほんもののオオカミのねぐらというものは,とてもすみごこちがよいと言いましたね。洞穴の一種なのです・・・・これは,オオカミにはそれでよいが,人間にとっては洞穴はよくありません。

 実際、洞穴というものは,とても湿っぼく暗いものです。そして土臭いものです。だから体に良くないのです。テンダーフットの少年たちは,往々にして自分たちの手で穴を掘ってキャンプします。だが1人前のスカウトはそんなことはしません。そういうところに寝て暮らしていると,まもなく病気にかかることを知っているからです。

 あるボーイスカウトは洞穴を掘っているうちに,穴が崩れて生き埋めになった。そのためこの少年は死んだということもありました。私は,君たちに。パック(隊)のデン(集まりをするところ)は,コーナーにつくるようお願いします。あるいは壁の一部を利用してもよろしい。そこのところは,君たちのシックス(組)の所有にします。そういうものを君らが持っているならば,君らはそれをできるだけカブらしく明るいものに仕上げるのです。それがコーナーを利用するのであれば,袋の布で寸法をとってスクリーン(垂れ幕)にし,そのスクリーンに木だのジャングルの動物だのを描いて下げることも,むろん許されるでしょう。頭をひねって与えられたスペースを最も良く活かす考えなさい。ジャングルの動物の写真を一揃い手に入れてくるか,君の組(シックス)の色をぬったカードとか,絵入新聞から面白い絵を切り抜いてくるとかするのです。隊の集会室(パック、デン)を本物のデン(巣)らしくするやり方は,他にもたくさんあるでしょう。そういう仕掛けは,集会が済んだ後に取り外して片づけてしまっておくというやり方さえあるのです。どんなことが君たちの手でできるか,君の組の組長(シクサー)がアケイラ(隊長)のところへ行ってよく話してくるよう,組長に頼みなさい。

〔訳者記,以下カナダ本より・・・・
        カナダ風ねぐらのカーテン

 このカーテンは,白い木綿の布で,9フィートに5フィートです。ドアーのたれ板にはその組の色をぬります。カブが内にいないときはドアーの縁にあるドーム・ファスナー(ドアをくくるもの)をピンでとめておきます。

 ジャングルの物体は4色で彩色します。岩や丘の輪郭は黒でぬる。これはテレピン油で薄めた上等のエナメルを用い,カーテンは上の縁に通したコードでもたします。ドアーのたれの上の方は白い四角形にします。これは透明なセルロイドの封筒でありまして,その中に組の進級表を入れておくのであります。

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