-
●観察
●感覚訓練
●風見と立像
●鳥の巣
●しのびより
●目かくしで道がわかる
●オオカミの鼻はするどい
●オオカミの耳はするどい
●雪の新聞
●足あとを読む
●ペット
●ゲームと練習
●観察ごっこ
- ●ラッジャード・キプリングの詩
- さても、これはジャングルの「さだめ」です・・・・大空のように大昔からあって、まことを伝える・・・・
- だから、これを守るオオカミは栄え、これをやぶるオオカミは、死んでしまう。
- サイはトラの機嫌をとるが、オオカミの子よ、お前の頬髭が伸びたなら、オオカミは狩人であることを思い出しなさい
- ・・・・自分の食ペものは自分でとりに行くのですぞ。
- ラジャード・キプリング
- この詩の訳は、サイ(ジャッカル)という動物は、卑しい奴で、自分の食物を自分で狩りをしない。トラが狩りするとき、こっそりついていって、トラの食べ残したものをちょうだいするという、ずるい獣だという意味であります。
- ジャッカルは、人間のやくざ者とよく似ています。自分で働いて命を繋ぐのでなく、他人が働いて得たものを、こっそり盗んだり恵んでもらって暮らすのです。
- しかし、オオカミはこれとはすっかり違います。自分の食物は、自分で狩りしてくる。それは自分で働いて生きてゆき、人手を借りないで自分の暮らしを立てる立派な人間とよく似ています。ですから、私の親友のカブ諸君もこれと同じようにします。
- オオカミが食べ物にする獲物を狩るとき、その動物がどこにいるか、まずその臭いを嗅いでから狩りするのです。
- このオオカミのようなにおいを嗅ぐカを持っていない人間どもは、動物の足跡を追跡して狩りします。スカウトたちにとって追跡(トラッキング)というものは、狩りのときばかりでなく、何かの情報を掴むためにもよく用いられる方法であります。
- そこで、追跡(トラッキング)と、忍び寄り(ストウキング)というものが素敵な仕事になってきます。皆さんが追跡の名人になりたいならば、厳しい練習と訓練が必要です。インドでは、一人前のトラッカー(追跡する人)になるのに、まる7年間の訓練を受けます。皆さんは、スカウトになってから追跡の仕方を本式に学ぶのですから、まだ大分先のことになります。けれどもカブとしての追跡の仕方もたくさんあるので、それをやってみてよろしい。これは後でたいへん役に立つでしょう。
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- ●感覚(センス)の訓練
- スカウトが、すばらしいトラッカーになるためには、前もってどんな小さいこと(もの)にも注意するというカを作らねばなりません。このカは、立派なトラッカーになりたいという目的に近づくくのに役立ちます。
- そのカは、物を見るという眼の働きだけでなく、耳や鼻や手を使っても養うことができます。とりわけ心をはたらかせカを作るのであります。心のはたらきによって調べている事物の意味がわかるのであります。
- ですからカブとしては、君たちの眼と耳と鼻と手と心のはたらかし方を学ばねばならないことになりますね。
- ここにそのやり方の目録があるのですよ!それにはたくさんやり方が示してあります。私は、君たちがどのようにそれに取りかかればよいか、それを書いて行きたいと思います。これは、君たちが隊の集会の時に練習するだけでなく、一日中どんな時でも稽古して、気をつけて物を見ることが一つの習慣になるまでつづけてするのです。
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- ●眼のつかい方
- 私が、ウルフ・カブの年ごろの少年だったころ、道で出あったお巡りさんの襟の番号を注意して見ることにしました。これによって一度出あったことのある警官を思い出すわけです。そして、1人の友達を散歩に誘い、その警官が立っているところへ行きます。(交通巡査は、一定の場所に「交通整理」のため立つものです。・・・・自分の分担・・・・区域を「巡回」する巡査のように歩きまわりません)
- 私どもは、その警官が見えるところまで行きます。かなり遠くから手をかざして、警官がこっちを向いているとき、じっと睨みます。するとその警官の番号と、警察署のマークがだんだん見えてきます。そこを通りすぎてから、私の友達は、私の視力(見る力)が素敵に正しいのに感心したものでした。
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- ●風見と立像
- 町の風見の全部が、どの方角をさしているか、それを見わけることも悪くありません。私いつも小さいノートブックをもっていて、自分が見た風見を絵に描くのが常でした。風見があることに気がついて、それを見上げる人は、ほんの僅かしかありません。
- イングランドの、ロンドン・ローヤル・エクスチェンジ(手形交換所)の屋根の上には、金色のとても大きなキリギリスが風見として立っています。日に何千人という多くの人々がその下を通るのですが、これに気のつく人はほとんどないのではなかろうかと私は想像します。その人たちは、よいスカウトやウルフ・カブのような鋭い眼を持っていないのです。
- もし、マンチェスターのボーイスカウトに、セイント・ジョージとドラゴンの立像はどこにあるのかと聞いてみるなら、彼はたちどころに、それはピカデリーのヴィクトリア女王の像の上の方にその像が小さく立っていますよ、と教えてくれるでしょう。有名な手品師のホウディニという人は、数多くの小さい品物を一目見て覚えるという注意力によって、たくさんのトリックをしていました。彼は少年時代から稽古を始めたのです。店のショーウィンドウを2秒間眺めてから回れ右をして、連れの者に窓の中にあった品物を一つ一つ言い当てる練習をしたのです。このやり方は、ウルフ・カブのみなさんにも非常に良い訓練になりますから、やってごらんなさい。
- また、走りすぎた自動車の番号を読む。それとともにその時刻に注意します。それを覚えておいて、後ほど書き記すのです。これもなかなかよい練習法であります。そしていつか役に立つと思う。時として警察が通行人をひき逃げした自動車を「捜す」ことがあるから。警察はその番号を公表する。その時君は、いついつどこそこでその事を見た、という報告ができるでしょう。
- 私は、諸君の大部分が眼が鋭くて、鉄道の機関車番号を書き留めることをよく知っています。同時に、違ったクラスの機関車やそのほか眼にとまった物、何でも注意することを忘れませんね。それは、たいへん良い観察訓練なのですよ。
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- ●鳥の巣
- 君たちは、ちょっとしたことにも注意を向けねばなりません。それには、鋭い眼の力がいります。鳥の習性や、その巣の作り方を観察するとき、これが大切です。
- もちろん、スカウトやウルフ・カブたちは、小鳥の巣を発見したいと思いますね・・・・その小さな卵をとるという考えではなくて、小鳥はどのように自分の巣を作るのか、それをしらべたり、どんな鳥はどんな卵をうむのか、ひな鳥をどのようにしてそだてるのかを、しらべるためにいたします。これは、ストウキング(しのびより)と、ウォッチング(みまもり)によってするのです。
- それは、巣のところへ行って、卵をとり出しさえすればできる仕事です。スカウトやウルフ・カブたちは、巣を壊さないよう全力をつくします。
- 巣を見つけ出すには、もちろん薮の中覗き回すのです。そして、やっと見つけるわけですが、それよりももっとスポーツらしいやり方があります。それは鳥がどこから飛び出して、どこに帰るかを調べる方法です。実際、野鳥はこの方法だけによって、その巣の在り処を見つけられてしまいます。時として、これはかなり難かしい場合があります。
- 例をチドリあるいは、もっと普通の鳥であるヒバリにとってみます。君たちは、この鳥が地面から舞い上がって歌いながら空をかけまわることころは見えますが、それが舞い上がった場所へ行ってみても、その巣はなかなかわかりません。彼は巣を出たあと、ある距離を地面に沿って走り、それから舞い上がるのです。降りてくる時も、その巣を目指して降りてくるのではありません。巣から少し離れたところへ降りるのです。ヒバリはウイローウワブラーのように、地面の中に巣を作ります。
- 大きなシジュウガラ科の鳥は、立木の穴に巣を作ります。けれどもしばしば、ポンプの管だのつぼの口のような変なところに巣を作る。ゴジュウガラは、いつも木の洞穴に巣を作ります。
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- ●ストウキング(しのびより)
- 小鳥や花の自然研究をするのに、1年中でいちばんよい時期は春であります。
- ツバメとかその他の鳥は、我が国で夏を過ごすため、南の方からちょうどその頃やってきます。眼や耳をはたらかさない普通の子供は、ウルフ・カブが森の中や野原をぶらつき歩くようなことに、あまり興味を持たないでしょう。
- するどい耳は、甲高い笛みたいな普を聞いて、体の小さい休みなく動く、茶色のミソサザイのいることを知るでしょう。これは耳の力ですが、その次には小枝から小枝へと忙しそうに飛んでいくきびきびしたその姿を追いかけて見る眼のはたらきが必要になってきますね。
- ツグミの巣を見つけるのも、なかなか面白いものです。光った眼をしたお母さんツグミはたくさんの卵を抱いています。もし君が親切で害をしないことを示すなら、この母ツグミをたいへんよく馴らすことができます。
- 鳥を観察したその記録を作っておくと、たいへん面白いです。その年初めて鳴き声を聞いたり眼で見た日付けを書いておきます。これを次の年の記録と比べてみたり、またお友だちの記録と比べてみるのです。
- ノートには、その年初めて声を聞いたカツコーだの、初めて見たツバメだのヒバリだのツグミの発見日を記します。
- もし、鳥の姿とかその卵の絵が描けるなら、これはまた一層そのノートブックを立派なものにするでしょう。
- また、見つけた巣の一覧表を作って保存することも、よいですね。
- 若いオオカミは、野山において自分の身を守る、守り方を稽古します。
- 〔訳者記、・・・・カナダ本は・・・・
- ロング(W.J.Long)という人の書いた「ノーザン・トレイルス」(“NorthernTrails”北の国の旅)という本に、ニューファウンドランドのオオミカの子供が、荒野の中で自分の体を守る守り方の稽古の様子を書いたところがあります。〕来る日も来る日も鳥や獣の習性を学ぶのです。ちょうどそれは、ウルフ・カブがするのと同じことをするわけです。
- けれども、人間の子供の方の目的は、それよりも、もっと他にあるのです。そして、その仕事はもっと親しみのある興味を持つものです。これに対して若いオオカミの場合は、よい狩りをし獲物をとって、それを食べるために稽古するので、その点が違います。
- 若いオオカミは、チドリの一群が地面に降りて食べ物をあさりながら、オオカミの方へだんだん近づいて止まった時、それを取り囲んで、自分の体が雨風にたたかれた古材木のように見えるまで、地面に生えた灰色のコケの中に体を沈めます。そして、たとえその汁気の多い獲物が少ししかいなくても、また遠いところにあろうとも、がっかりしないで張り切って狩りをします。
- ところが、アヒルやカモが池とか水たまりにやってきた時は、若いオオカミたちは、このバカな鳥どもを奇妙な方法でおびき寄せる練習をするのです。
- オオカミたちは、水辺の草の中に隠れます。その間に、1匹のオオミカは、どこからでも見える水ぎわに出ていって、アヒルどもがその首を伸ばして、今まで見たこともない不思議なものにびっくりしてガアガアいうまで転がり回ってみせるのです。
- 臆病で浅はかな性質を持つアヒルどもは、珍しいものを見たとき、それが何であろうと口ばしでつついてみなければやみません。
- 黙ったりガアガア鳴いたりして、水の上を泳いでいたアヒルの一群は、向きを変えたり散ったり集まったりして、おしまいに岸の方へ泳いで行きます。みんな首を干物ようにまっすぐに立てて、この不思議なものの動きをもっとよく見ようとします。
- アヒルたちが、だんだん近くにやってくるにつれ、そしてまだそれを続けて近づくと、出し抜けに草の中からオオカミたちは、飛び出してきます。アヒルはみんな向こう見ずに水を跳ね返して、まるで気ちがいじみた騒々しさで、ガアガア鳴いて逃げます。
- けれども踊っているオオカミの後ろに立っていた1羽か2羽かのアヒルは、不思議なものを見た見物料を払うことになるのです。(訳注、オオカミに食われる)
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- ●目かくしで通がわかる
- 立派なスカウトは、視力(見る力)だけに頼りません。それは昼間と同じように、夜にしなければならないことがたくさんあるからです。真っ暗な晩には、よく見えないのは言うまでもありません。ですから眼以外の感覚、例えば聴覚や嗅覚、それに触覚を使わねばならないのです。
- 私は、前に兵士の大部隊を真っ暗な夜間に、敵を攻撃するために導く仕事をせねばならないことがありました。その前の日、私はそこへ行ったことがあるので、私は前日に自分のつけた足跡を探して、それについて行ったのですが、その探し方は、手で地面を触って、足後を手探りしたのでした。
- どのスカウトも、暗い夜に活動できねばならないのです。ですから、私はどのカブにもこういう練習を進めます。
- 毎朝、まだ暗いうちこ起きて、水を使うかシャワーを浴び、歯を磨き、体操をして着物を着替える。頭の髪に櫛を入れる。こういうことを電灯をつけないでしてみるのは、よい、訓練になります。してごらんなさい、わけなくできます。
- また、目隠して歩くのもよい稽古になります。
- 眼の他の感覚をはたらかすことは、たいへん役に立つことがわかるでしょう。
- 音を聞くことによって、距離を知る助けとなることもできます。教会の時計が時を打つ音とか、鉄道の停車場での汽笛とか、沼でないているシギの声・・・・などは、見えないとき距離を知るのに役立つものです。
- あるいは、また臭いによって厩の側を自分が通っていることや、食品店の前とか畑のところを通っているとかが判り、君の道案内になります。
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- ●オオカミはするどい鼻を持っている
- エジプトに、年よりのアラビア人の案内人がいました。この人は盲目で両眼とも全然見えません。それでいて、よく道がわかるのです。砂漠の中だってそうなのです。これは砂の臭いでわかるのです。行く先々でそこの砂を手のひら一杯拾って、その臭いを嗅いで、自分の歩いた道が正しかったかどうかを調べるのです。その場所に行けば臭いによって、それがどこのキャンプ地なのかを見分けるのです。
- ある時こういうことがありました。この案内人に連れられた人々が、この男を騙してやろうと考えたのです。それでキャンプ地を発つとき、そこの砂を袋に入れて持って歩いた。次のキャンプ地に着いたとき、その砂をとり出して、この男に嗅がせました。これはここで拾った砂だよと言って・・・・
- この盲目の男は、その臭いを嗅ぎました。へんな顔をしてもう1度嗅いだ。そして、とても悲しそうな顔をしました。たいへんな失敗をしたと思った彼は、みんなを元のキャンプ地へもう一度連れ戻したのです。
- 皆は騙してやったんだと大笑いをしたのですが、それがわかるまでのこの男の惨めさは、とてもひどいものでした。
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オオカミのぶらつき |
- もう何年も前のこと、私がズールー人と戦っていたとき、ある晩私は露営で起こされました。それは変な臭いがしたからでした。その臭いはズールー土人の臭いだったのです。
- 私はすぐ仲間の者を起こしました。けれども、仲間たちは何も感じなかった。この人たちは煙草を吸うからです。煙草を吸う人は、吸わない人のような臭いを嗅ぐ力がないのであります。煙草を吸うと、においを嗅ぐ力をだめにするばかりでなく、走れば息切れがするし、またしばしば視力を衰えさせたり、消化を弱めるのです。
- ですから、立派なスカウトは大抵煙草を吸わないのに、気がつくでしょう。
- さて私は、敵がどこからか我々に近づいてくるのに感づきました。それで皆を起こしたのです。私はもうすぐ敵が草の中を這ってくる普を聞きました。これは私たちの寝込み襲って捕らえようとしているらしい。どっこい、そううまくはいきません、反対に彼らは我々の一斉射撃にびっくりして飛んで逃げて行きました。
- この話で、君たちは嗅覚がどんなに大切か判ったでしょう。もう一つ、フランスであったお話があります。
- 1人の男が小包を持って、お金持ちの銀行家の家に顕れました。銀行家は留守だったので、その母親がその小包を受けとりました。その見知らぬ男は、この小包の中には大切なものが入っているから受取書を下さいと言いました。
- 母夫人は、テーブルに寄りかかって受取書を書いていると、その男はナイフで彼女の背中を突き刺したのです。その妹さんがびっくりして助けにきましたが、男はこの妹さんをも突き刺して逃げてしまいました。
- この傷ついた2人の婦人は、この男と同じ男が、前にジャミーという名前で銀行にきたことがあると、証言したのです。
- そこで警察は、このジャミーを捜し回ったのですが、どうしてもわかりませんでした。
- ところが、探偵局長は、その男が置いて行った小包を持っていって調べたところ、その中には古い、鉄道案内書のほか何も入っていないことがわかった。しかし、彼はその本が特別な臭いを発していることに気づいたのです。それは、皮なめし工場の臭いでした。
- 警察は、パリ郊外のセンティリイにある皮なめし工場を一つ一つ調べました。そしてその男はある皮工場の高い地位についている者で、最近パリの銀行家の家に現われたということがわかりました。
- その男は2人の婦人の前に連れ出されました。婦人たちはこの男に違いないと言う。遂に男は自白したのです。
- この話でもわかるように、ちょっとしたきっかけに注意することができるという力、これは大変役に立つもので、注意力を集め合せてその意味を解いていくのであります。
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- ●オオカミはするどい耳をもっている
- 南亜戦争(1899〜1901、南アフリカのポーア戦争)のとき、私は、ある山の麓に近いキャンプにいました。私たちの頭の上にはつき出た岩山がありましたが、その岩山のずっと上の方に、私は1匹のヒヒが、警報を発している声を耳にしました。
- キャンプには、何百人もの兵隊がいたのですが、このヒヒの叫び声を聞いた者は無かろうと思います。仮に聞いたとしてもたいして注意を払わなかったでしょう。
- だが、スカウトにとっては、これは聞き捨てにできない大きな意味を持つものです。
- 1匹のヒヒがそこにある断崖の上に上って、突然仲間のサルに警報を発するには、何かの理由があるはずだが、一体それは何だろう? 私は、望遠鏡を出して、注意深く山の上を覗いて調べました。
- 果たして岩の間に人の顔が2つ3つ見えた。彼らは、用心深く体を隠している。私はこれはボーア軍のスパイで、わが軍の様子を探っているなと判断しました。そこで私は兵力を二つに分け、そっと岩山に上らせ、敵の後ろに回らせて、これを捕らえたのでした。
- これはやはり、私の思ったとおり敵の斥候が、我が軍の動きをスパイしていたもので、彼らの動にサルどもが怖れて警報を発したものということが判ったのでした。
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- ●雪で作った新聞紙
- 雪で新聞が出来るのですか? ええ、出来ますとも。冬がやってくると、冬は、白い妖精の大軍を差し向け、私たちに、ニュースを知らせるため、新聞を作らせるのです。
- 雪片は、妖精でありまして、何百、何千、何方、何億となく舞い降りてきてこの地上に降り注ぎ、野山を1枚の白い紙にしてしまいます。
- これが妖精たちの新聞なのです。頭のよい者なら誰でもこれでニュースを読むことができます。初めはただまっ白で何も書いておりません。雪だからです。けれどもあなたが近づいてよく見るならば、小さな斑点や印がすぐに見えます。それを読むだけで、みなさんは面白いニュースを授かるわけです。 ’
- さあ、雪の中を歩いてみましょう。どんなことが書いてあるか、お−い! これ、な−に?
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水に棲む鳥は、その大きな平たい足だけでヨチヨチ歩く。つま先を内側に向ける。マザー・フラット・ダッグやイエロー・ダックリングのように。 |
- スズメは、もう雪の中に出て行きましたよ。ぼくは、どういう勉強をしたろうか?
- そう。薮の中にすむ鳥たちは、たいてい両足をそろえてホップしますね。
- もしそれがヒワだったら、彼女の足はこれより少々小さいはずです。そしてそのしっぽは、ところどころ雪の上にさわるはずです。軽く刷毛で掃いたような跡もつくはずです。もしこれがツグミだったら、足跡はもう少し大きくて、ホップのしかたはこれより大きいです。
- キジだのメンドリのような、少しばかり大きい鳥で、地上で暮らすものは片足ずつ互い違いに歩きます。
- また、水の中で暮らす鳥は、大きな平たい足だけでヨチヨチ歩く。そのつま先は内側に向く。フラット・ダックのおばさん、またはイエロー・ダックリングとか、足さきのわるい年よりのアルダーマン・グースのように。
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互い違いに歩く歩き方 |
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ウサギは出かけたナ ・・・・雪につけた足跡はしるす |
- これは、何だろう?
- スズメは、こういって立ちどまり盗んできたパンの一切れに挑んだのです。それからそいつを口ばしにくわえてピョンピョン跳んで行ってしまいました。そのパンのカケラは、かなり大きいらしい・・・・雪の上にしるされた大きさで分かる。・・・・そして、まだひとつも食べずに残している。とても全部食べられないので持ち歩かねばならないはずです。
- まさにその通り。ごらん! あそこの地面の上にパンが置いてある。足あとは真っ直ぐそれに向かってホップを続けているでしょう?
- それにしても、スズメの通った道を横切っているのはいったい何だろう? ははぁ、ウサギが出かけたな。
- なるはど分かった。向こうの方にパンが転がっている。スズメの足跡は突然これでおしまい。飛び立って行ってしまったのだ。
- たぶんスズメは、ウサギがやってきたのにぴっくりしたのでしょう。 いや、それは違います。ウサギの残した足跡の先の方に、スズメの足跡がついている。と言うことは、ウサギが行ってしまった後、スズメはある時間をおいて、もう一度やってきたことになる。尚その上、もしもウサギがくる前にそのパンがそこに残されていたとするならば、彼はそれを少しぐらい囓っているはずだと、ぼくは思うのですがね。そう思いませんか?
- それにしてもスズメが突然足後を残して飛び去ったのは、一体何のせいだろうか?
- あ、わかった!
- ここに、別の足後がありますよ、誰のだろう? こんなに用心深く、しかも後ろ足は、前足の足後にきちんと重なるように歩くやつは?
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ネコ。狩りにお出まし。 |
- 四つ足のくせに2本足しかないように雪の上につけるやつは?
- それはね、ネコだよ。彼もまた狩りにお出ましなんだ。ごらん。彼の足後は歩幅がだんだん狭くなっている。彼は、スズメに向かって忍び寄りで近づいていく足どりになっている。その尾っぽは、雪をここかしこに払いのけるように、いらいらしくむらうっているね。
- だけど、この突然の方向転回は、何を意味するのだろうか? 彼の跳び方は長い後ろ足に始まり、右の方に半分向きを変えて跳びあがり、それから走り、次に左に、長くバウンドしてギャロップしている! ははあ、それは宅犬のタロウが彼を追ってきたからだよ。ごらん。タロウの足跡を。ね。ギャロップしてさ、雪の中に深くめり込み、それから蹴りあげて、ネコの後を突進するように、猛烈なバウンドをしているでしょう。
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老犬タロウ、ネコを追跡。 |
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ガイルス氏、大いにタロウを叱る。 |
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あわれなタロウは、おとなしく主人のもとへ戻ってきている。ステッキを口にくわえてきた。 |
- 彼のご主人、ガイルスさんが、怒ったのなんの。彼が、足を止めてタロウを呼んだのは、ここですよ。ね?
- あッ、そうか。あれだね? 彼は、タロウに、ステッキを投げつけていますよ。あわれなるタロウは、おとなしく這ってご主人のところへ戻ってきている。ステッキを口にくわえてさ。(これは、ガイルスさんの足跡がステッキのあったところまで行かず、犬の足あとの方がそこまで行って、ガイルスさんのところへ戻ってきているのでわかる。ステッキはもう雪の上にはないからです。)
- こうして、万事は無事に終わりました。誰にも怪我はありませんでした。
- ガイルスさんは、雪の中に埋もれたステッキをついて、お家に帰尾っぽを振り上げて逃げ、スズメ煙突のてっペんで囀り、ウサギは暖かい乾いた穴の中に安全に隠れました。
- この日のニュースは、これでお終い、「妖精たちは、どうなったのですか?」と、君たちはきく。 うむ、それはね。彼らが天から降ってきた時は、他のものと同じように死んでしまったのだ。そして太陽が昇ってきて起こすまで、じっと地べたに冷たく白く寝ていました。それから溶け合って消えてしまったのですが、彼らの霊魂は再び天国に昇ったのです。昇ると皆集まって大きな白い雲になり大空に浮いています。
- さあ、そこで君たちが、もっと地面の上のニュースを知りたいとき、彼らはまた、雪片となって地上に舞い降り、君たちの読物となる新聞をばらまくのです・・・・ただし読み方を知っているとしてでのことです。
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- ●足跡の読み方
- ザジックは、ペルシャにおける驚くべきスカウトでありました。ある日、王様の持ち物の一番良い馬が逃げ、どうしても見つかりませんでした。ザジックは森の中をぶらぷら歩るいていますと、王様のけらいが何人かやってきて、逃げた馬を見たかどうかと、彼に尋ねました。
- ザジックは、こう答えたのです。
- 「あなたのおっしゃるのは、よく太った灰色の馬で、およそ、15ハンド(訳註。1ハンドは4インチ)の高さ、尾は約3フィート半の長さで、金のイボのついたをはめ、銀の蹄鉄をつけたもので、右の前足がびっこをひいている馬ではありませんか?」
- 「そのとおり。で、どこで見たか?」
- 「存じません。私は、見ませんので・・・・」
- 王様のけらいたちは、こいつ馬を盗んだに違いないと思って、彼を召し捕りました。ところが、それから間もなくその馬は見つかって連れ帰られました。こうなるとけらいどもは、一層ザジックに対して問い詰めるのです。で、彼はこう言ってやりました。
- 「私は、森の中の小径で一匹の馬の足跡を見ました。その馬は確かに、私の通った道を歩いたことを示しています。しかし、右の前足は左の前足より歩幅が短いので、その馬は、びっこの馬だとわかります。そのひづめは小さくしるされているので、これは良馬で値段の高い馬です。小径の左右の茂みに埃が散っていましたが、その埃はところどころ馬の尾ではらわれ右左、左右とはらわれた跡がありました。こみちの幅は7フィートですから、馬の尾っぽの長さは、3フィート半でなければなりませんね。」
- 「道の上に、木がまたがりたれているところが、1カ所ありました。その木の枝は地上5フィートの高さでした。馬はこの下をくぐり背中はこの枝に触ったはずなので、そこには、2〜3本の毛が付いていたから、私は馬の毛色は、それによって灰色であり、その高さは15ハンドだとわかりました。」
- 「歩いているうちに、この馬は足で小石を蹴っています。その時蹄鉄の銀の粉が散っているし、また、立ち止まって口一杯の草を食べている。それは小石の近くです。その小石にくつわのいぼの金粉が散って付いていました。それで、この馬は、金のいぼの付いたくつわをはめていたことを示します。」と。
- スカウトが、いろいろの情報を読みとる方法は、このようなやり方によるのであります。けれども、そのためには眼を充分はたらかして、どんな小さいサインをも見逃さないほどの注意力を持っていなければなりません。君たちは、ずいぶん長い間かからねば、ここまで上達できないでしょう。
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- ●ペット(愛する動物)
- もし、みなさんがペットとして動物や鳥を飼うことができたなら、動物や鳥の研究や、理解に役立つでありましょう。たとえハツカネズミとかテンジクネズミのような小動物からやり初めたとしてもけっこうです。むろん、お母さんによく話してお願いしてからですね。スカウトのおきての一つに、「スカウトは、動物の友だらである」ということばがあります。ですから、君がスカウトになるときの用意に、君と出会った動物に親切をつくす稽古ができます。もしペットになる動物を持つならば、時間を正しく決めて餌をやったり(自分のたべるものを分けてやろう思うでしょうね)、その体をきれいにしてやったり、ねぐらをきれいに掃除してやったりするように、かわいがり方はたくさんあります。
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- ●ゲームと訓練
- 君たちの感覚を鋭くするためのゲームと訓練のいくつかを、次に述べまし上う。
- 感覚訓練ゲーム
- ◆インザ・ポンド
- カブたちは円陣を作ります。チョークで描いた円の外側に立つようにします。オールドウルフが「インザ・ポンド」と号令をかけますと、みんなは円の中に飛び込みます。「オンザ・バンク」というときは、円外へ飛び出るのです。もしみんなが円内にいるときに「インザ・ポンド」の号令がかかったら、誰も動いてはなりません。円外にみんながいるときに「オンザ・バンク」がかかったときも動かないのです。「オンザ・ポンド」だの「インザ・バンク」だのという号令は、無視してよろしい。これは君らをはぐらかす「わな」なのです。間違いいの一番少いカブを勝者とします。
- ◆オ・ダラディー
- カブたちは円陣を作り、オールドウルフはいろいろの命令を出します。けれどもその命令は、言い始めに「オ・グラディーはいいました」という言葉がつきます。この言葉のつかないときは、命令に従わない。従ったらアウトになるのです。
- ◆鉄にさわれ
- ゲームの最中に、オールドウルフが「鉄に触れ」だの「木に触れ」とか、「黄色い物に触れ」とか言います。カブたちは駆けて行って、言われた通りにします。一番のろい者が1点負けになるのです。
- ◆この味は?
- カブは全員目隠しをします。そして、みんながよく知っている品物の味をいくつも味わうのです。一番多く言い当てた者が勝です。きつい味を持つ品物の例をあげると、ハッカ、カンゾウ(甘草)、チーズ、カラウエー(ヒメウイキョウ)、タマネギなど。
- ◆この臭いなーに?
- 2フィートの間隔をおいて、たくさんの紙袋を一列に並べます。それぞれの袋の中には違った、臭いのする品物が入っています。例えば、コーヒー、タバコ、タマネギ、カワ(革)、バラの葉、オレンジの皮など。カブは、それぞれ5秒間ずつ、その臭いを嗅ぎます。嗅ぎ終ったら順番を間違えずに、何の臭いなのか答を書くか口答で、オールドウルフにさし出します。
- ◆何にさわった?
- カブたちは皆、目隠しをする。たくさんの紙袋があり、その中には、お米、砂の一かたまり、お茶などが入れてあります。これを円陣に沿ってまわします。それを手でさわって一番正しく品物の名を答えたカブの勝ちです。
- ◆何の音か?
- 全員目隠しをします。1人のオールドウルフが、さまざまな音をさせます。自転事のタイヤにの空気を入れる音だの、ドアーをいきおいよく閉める音、椅子を床の上に引きずる音など。一番正しく答えた者の勝ち。
- ◆忍び寄り
- 一人の目隠ししたカブが円陣の中心にすわっている。オールドウルフからの合図によって、一人のカブが円陣から出てきて、音のしないように、そーっと這って目隠しのカブに触る。うまく、相手に気づかれずに触れたら、交替して中心に座るのです。もし中心のカブが物音を耳にしたら、触られるまでに音をたてた者を指さします。うまく指さしたら、円陣の仲間になる。
- ◆顔かき
- みんなで円陣をつくる。オールドウルフが、空中に一つの顔を描く。
- はじめに輪郭を右まわりに書くのです。次に右の眼、その次は左の眼、次に鼻を上から下へ書き、次に口を右から左に書きます。これらは全部、左の人さし指で書くのです。カブは、それぞれこれと同じ顔を、同じ順序で同じ書き方で書くのです。
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- ●観察の旅
- 町または田舎に隊を連れ出して、徒歩旅行させます。途中で注意すべき物に、それぞれ点数を割り当てておきます。
- 例えば・・・・
びっこをひいているウマ | 8点 |
カラス | 3点 |
鳥七羽ごとに | 3点 |
鳥の卵のような形の小石 | 3点 |
カシの木 | 1点 |
赤いきもの | 1点 |
風見 | 1点 |
その他 | |
- 日標物を1つ見つけたら、その点数を計算して、小声で、オールドウルフに報告する。その得点は、その少年の名前と見あわせて記録されます。
- この旅が終わると得点は合計され、優勝者が発表されるのです。
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